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歌を歌うように、音を奏でるように、僕らはコードを書く事ができる。


毎日のように新しい技術が聞こえてきて、去年覚えたことの幾つかは、今頃はもう古い何かの一つになってしまって、頑張って追いつこうとしても何だか少しずつ離されていくような気がして、だからいつもどこか初心者な気持ちがして、同じ年頃の人にも、僕よりずっと若い人たちにも、自分よりもずっと色々なことを知ってる人が沢山いて、だから時々不安になったりもして、落ち着かない気持ちになったりもする。

ねぇ、僕はだいじょうぶかな?

§

年が明けてすぐのある夜。僕は妻と一緒にライブハウスで音楽を聴いていた。演者の多くは知らない人たちだったけれど、演奏もパフォーマンスも素晴らしくって、僕らは少しお酒を飲んで、その時間をとても楽しんで、そしてふと気づいた。「演奏しているアーティストは皆とても楽しそうだな」と。

僕はエンジニアである。こんなふうに、僕は毎日の仕事を楽しめているだろうか?

「いやほら、僕らは地味な仕事だよ。スポットライトも無いし、ファンも居ないし、音楽をやってる人たちとは違うよ。あの人たちは自分を音楽で表現してるんだよ。でも僕らは要求仕様をカタチにするだけだから、ぜんぜん違うよ。僕らの仕事は……」

「…そうなの?」

演奏を楽しむステージの上のアーティストを見ながら、僕は否定した。

僕は自分が仕事を「楽しめている時」を思い出してみる。新しいコードをどう書こうか考えている時。もう少し良いコードにならないか?と試行錯誤している時。そしてそれが決まった!時。面白そうな技術をちょっと予習してみて「アレに使ったらスゴイんじゃない?」と妄想した時。お客さんに納品して感謝された時。そして実は隠しておいたオマケ機能に気づいてもらって感動してもらった時…。

そうだよ。僕らの仕事も素敵ことがいっぱいじゃないか。

ミュージシャンに光でいっぱいのステージがあるように、僕らには僕らが持ってる技術を発揮できるプロジェクトがある。ひとつひとつのプロジェクトが僕らのステージだ。ただ「こなして」たら楽しくない。どのプロジェクトでも、自分の技術を存分に発揮して、僕らはコードを書いて、まず自分が楽しんで感動したら良いんだ。そこから自然に新しい目標やモチベーションが生み出されるだろうし、技術も追いついてくるだろう。

忘れたらダメなことは、僕らの仕事も創造であり芸術であるということ。大切なことは、だから僕らは楽しむことが出来るし、楽しむことでこそ自分の未来が広がって行くんだろうということ。そして気づくべきことは、もし僕らに死が訪れるとしたら、それは自分自身の仕事に感動できなくなった時だろうということ。

歌を歌うように。音を奏でるように。

僕はエンジニアだ。そして僕は今も、スポットライトの中にいるんだ。

 

§

クライベイベー EG MVの・ようなもの

本文のようなことを考えさせてくれたアーティストの一人、EG さんの「MVの・ようなもの」です。生きてると、状況が良い時も悪い時も色々あるだろうけれども、僕はどんな時もそれを受けとめて、こんなふうに仕事をして行きたい。そして僕は僕がエンジニアである限り、いつも自分自身が感動できるような仕事を積み重ねて行きたいです。それはきっと僕のため、お客さんのため、そしてこの世界の為になるだろうと。

新年の挨拶にかえての・ようなもの 。

 

 

 

 

§ 2014-1-13 追記

今も皆さんに読んでいただいているので、少しだけ追記。この文章を書いた動機の一つに、次の記事がありました「WEBデザイナーが死ぬ時」。ここに書かれてあることは、僕も少なからず感じていたことだったけれど、こんな風に恐怖を抱えて生きていたくは無い、とも思ってました。僕らにとって技術はとても大切だけれども、僕らが創造できる価値は、技術だけでは生み出せない筈です。すごい技術者さんも、自称普通の人も、そうでない人も、技術が好きなら大丈夫だと僕は思っています。技術が好きなら、自然と努力もしてるだろうし、自分の明日を広げていけるはずではないかと。

 

 

歌を歌うように、音を奏でるように、僕らはコードを書く事ができる。」への2件のフィードバック

  1. はてぶに頂いているコメントにこっそりと返信しておきます(はてぶのコメントに返信返せるとか出来ないですよね?)。

    > http://b.hatena.ne.jp/KentarouTakeda/20140111#bookmark-177029582
    > 素晴らしい心意気、だけど一点だけ。楽器の練習は、プログラムと同じく
    > ひたすら地味で根気の要る作業だ。乗り越えた人だけスポットライト浴びられる。
    > もちろんプログラマーもね。

    まったくその通りです (*’-‘*)。ここで書きたかったのは、その根気の要る積み重ねを続けるためのモチベーションは、まさに自分が感動することから生み出されるのではないかな、という気づきでした。

    > http://b.hatena.ne.jp/su_rusumi/20140111#bookmark-177029582
    > 逆だよ。演奏家は、プログラマがデバッグするように練習してるもんだよ

    こちらもまったくその通りです! 上と同じですが、努力した先に感動があるでしょうし、感動した体験が次の努力になるのかな、と思います。決してどちらが先ということはない、でもとても大切な輪廻だと思います。

    > http://b.hatena.ne.jp/web_shufu/20140111#bookmark-177029582
    > 「自分自身が感動できるような仕事」はどの仕事でも大事/
    > でも期限やノルマに追われると忘れるので注意しないと

    どの仕事でも大事なのは確かに、ですね♪
    でも期限や納期に追われて仕事を楽しめないことは、悪い循環の始まりになりかねないように思います。そこを諦めずに努力できることがプロフェッショナルではないかなと思います。もちろんこれは僕の考えるプロフェッショナル像なので、正解とは限りませんが。 (*’-‘*)

  2. ひさしぶりに読みに来たら感動しました。
    僕は演奏じゃなくて作詞・作曲してる感じやけど、表現者である以上、アーティストでありうる。ありたい!

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